統計は冷酷だ

ポーカー、ゲーム、サッカーなどについて考えていきたい。自分の為にもブログを更新していこうと思う。

block betに関して

こんにちは
今回は「The Mathematics of Poker」のP.161のAKQgame#5の内容について書いてきます。

AKQgameの概要についてはこちら

note.com



X,Yのプレイヤーがそれぞれ1枚ずつ存在するA,K,Qのうちの一枚をもち、ショウダウン時の強さはA>K>Qという状況です。
他のルールはホールデムなどと一緒です。

以前はベットサイズが1種類でレイズもない時のことを考えました。


今回はPot:4で可能なベットサイズが1 or 2であり、1 or 2上乗せのレイズも可能な場合を考えます。
X,Yがそれぞれ25%or50%pot betが可能である状況です。

pot: 4
X(OOP): A or K or Q
Y(IP): A or K or Q
bet: 1 or 2
raise: 1 or 2




結論からいうとGTOはこのシチュエーションのXはKで25%pot betすることがあります。


一旦Xが25%pot betしないのがGTOだと仮定し、それを覆すという方法で考えていきます。


Xの50%pot bet選択肢がある場合は以前のnoteでも書きましたが、AとQの割合を保ちながらどれだけのAをbetしても同じEVになります。


その時Yは25%pot betを利用する時は1/10の利得を得られ、50%pot betを利用する時は1/9の利得を得られるので50%pot betを利用します。


これらの考え方より


「Xは任意の割合のAとそれに伴うQを50%pot betし、残りのA,Qと全てのKをcheckする。
YはXのcheck対して全てのAと1/3のQを50%pot betし、Kはcheck
YはXの25%pot betに対して全てのAでcall or raiseし、3/5のKでcall、残りのKとQはfold
YはXの50%pot betに対して全てのAでcall or raiseし、1/3のKでcall、残りのKとQはfold
XはYの50%pot betに対してAでcall or raiseし、Kの一部をcallし、残りのKとQをfold」


(X,Yどちらのプレイヤーもbetされた時にAでraiseしても相手はQをfoldするだけなのでcallでもraiseでも同じです。)



という戦略を導くことができます。
実際これはXに25%pot betの選択肢がなければGTOです。

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Xの25%pot betを含めてこれがGTOかどうかを確認します。
つまりXが25%pot betを利用し戦略を変更することで、単独にEVを増加させられるのか確認します。

現状でのXのそれぞれのハンドでのEVは

A:  +\frac{1}{3}
K:  -\frac{2}{3}
Q: 0

となっています。


そこでKで25%pot betしてみるとどうなるのかを考えてみます。
YはXの25%pot betに対してAでcall or raiseをしてきて、全てのQをfoldします。



するとKでのEVは -\frac{1}{2} になります。



従ってXは単独に戦略を変更することでEVを増加することができたので先ほどの戦略はGTOではなかったことがわかりました。


ではXがKを25%pot betしてくる戦略に対してYはどのように対処すればいいのか考えます。


XがKでbetしてくることがあるならば、YはQでのbluff raiseによってXがKで25%pot betしてもcheckしても同じEVになるようにします。


そのためには、YはQで   \frac{ ( \frac{1}{2} -  \frac{1}{3} ) \times 2 }{5}  = \frac{1}{15} の頻度でbluff raiseをすればいいことになります。


Kはそのraiseに対しては必要勝率を満たしていないので単にfoldするだけです。


YはQでのbluffはサイズ関係なくK相手には必ず成功するので、Aにペイオフしてしまう損失を最小にするためにmini raiseを採用します。


ここまで整理すると、
XがKで25%pot betする選択肢が存在する。そのためYはXがKでの25%pot betとcheckのEVが同じになるように一定頻度以上のAでのvalue raiseと \frac{1}{15}のQでのbluff raiseをする。


するとXはAで25%pot betをすることで、XのKに3/5の頻度でcallされ、Qに \frac{1}{15}の頻度でraiseされます。


よって、XのAでの25%pot betした時のEVは、



 \frac{3}{5}  \times  \frac{1}{2}  \times 1  +   \frac{1}{15} \times  \frac{1}{2} \times 2  = \frac{11}{30}  > \frac{1}{3}



となり、check or 50%pot betの時より大きくなります。


従って、Xは全てのAで25%pot betを採用することになります。



また、XはYがQでbluff raiseするときとfoldするときのEVを同じにする必要があるので、
Xはbluff raiseに対してcall:foldの比すなわち、betするAとKの比率を5:2にします。


以上より以下のGTOを導くことができました。



X:
全てのAと2/5のK、1/5のQで25%bet、それ以外をcheck
betしてYにraiseされたら、Aでreraise or call し、Kをfold
checkしてYに25%pot betされたら4/5のKでcall、50%betされたら2/3のKでcall


Y:
Xの50%pot betに対してAをraise or call、1/3のKでcall、Qをfold
Xの25%pot betに対してAと1/15のQでmin raise、3/5のKでcall
Xのcheckに対して全てのAと1/3のQで50%pot bet、全てのKをcheck



実際にpiosolverで計算させてみても同じ結果になります。

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まとめ


今回の例では、


YはQでbetに対してcallすることはなく、Aでfoldすることはありません。
XがYのQでのブラフレイズに対してKでcallすることもありません。
従ってXがKでbetすることで、YのQからvalueを取ったり、YのAをfoldさせることはできません。


つまりKでbetすることはバリューベットでもブラフベットでもないですが、ベットの選択肢を入れた方が得になります。



ベットした方がいい理由はバリューとブラフだけの二種類だけでは当てはまらない時もあります。


繰り返し読んで参考にした記事です。


note.com





XはKでのblock betをうつことで、Yにraise bluffを一定頻度で行わせてAでさらなるEVを得ています。


25%pot betの選択肢によってYの利得が1/9から1/10に減少しています。


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バリューベットとブラフベットがベットをする大きな理由であり、この二種類から利益を得ることができるのは間違いないと思います。


しかし特にOOPでは中途半端なエクイティを持つハンドがcheckレンジの多くを占めると、IPに効率よくバリューベットとブラフベットで利益を得られてしまいます。

このblock betは自分のcheckレンジを調節することで、相手がバリューベットとブラフベットを効率よく行えるのを防いでいるのではないかと思います。


実際にpiosolverでRiverからのsubtreeでOOPに小さいサイズのベットの選択肢を入れて計算させると、ブロックベットをそこそこ広いハンドでするシチュエーションもあります。


以上です。
間違っているところや感想などあったらぜひ教えてください。